老い

古井由吉の前著『やすらい花』に:

鎮花祭、花鎮めの祭りというものがあることを、毎年、住まいの正面に咲き盛る花の散る頃になると思う。その往古からの祭りを今に伝える神社があり、年々花の散る頃に賑々しくおこなわれるそうで、行って見たい心はあるものの、よほど折り良く思い立たぬかぎり、めっきり出不精になった足を遠方まで運ぶことはこれからもおそらくないだろう。

とあったのを読んで、「年を重ねるとそんなものか」、とおもったのだが、昨夜から新作『蜩の声』を読み始め、「これまでの作品と今回の作品は何かが違う」と感じ、それでも頁をめくっていると、「それは自然描写が少なくなったせではないか」と考え出したところ:

また一段と面妖な、鬼気でも迫りそうな光景に見えて、夜風の冷たさにも怖気(おぞけ)をふるい、そそくさとガラス戸を締めて机の前にもどり、スタンドの灯の中へ首を突っこんでしばらくすると、

という箇所があり、「やはり、以前ほど外へ出なくなってしまったか」と思わせられた。




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