お疲れ様でした

 まだ体が利くうちにやっておきたいことはありませんが、と訊かれてしばらく考えた末に、ようやく一つのことを思いついたが、尋ねてくれた人の善意をおもうと口にするのが憚られた。
 その種のことでこれまでに私が出かけていったもっとも遠い地は長野県の飯田市で、新宿駅西口のバスターミナルから高速バスで四時間かかった。私の祖父の死から三年後、その祖父の弟の葬儀に参列するためだった。祖父は婿養子に入ったため、実家を継いだ人だった。
 その二年後に私の父も世を去ったが、葬儀に参加するたびに胸のうちで、「お疲れ様でした」とつぶやくときの、こどかすがすがしい気持ち、あれをまだ何回か味わいたいという思いがある。歳のせいだか、なにがなし安堵感を覚える時と場になってきている。
タグ:祖父
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