内向と意味、外部

前回につづき、『メルロ=ポンティ入門』から引用する:

「志向弓」とは、反射弓という生理学用語のいわば逆向きの働きである。反射とは、刺激があった場合に中枢神経系を経由せずに即座に反応する生理学的メカニズムであり、このようにUターンする回路を「弓」と呼ぶ。志向弓とは、身体内部と同様に、外部においても相互に直結されている回路である。手のひらを拡げてドアのノブを捻るに応じ、一々思考する必要がなくドアが開くように、身体の挙動があらかじめ外部の変化を含んでいて、知性を介さずに直接その変化を生じさせることができる。こうした志向弓によって繰広げられているのが、「意味空間」とでも呼ぶべき世界である。
 そうした意味空間は、身体相互のしぐさの意味作用を前提するがゆえに、同時に複数の身体のあいだに連続して展開されており、われわれが生活しているのは、自然的物理空間においてと同様、そうした(人間的・じんかんてき)意味空間においてである。

引用は以上。

引用中の「一々思考する必要なく」、「知性を介さずに直接その変化を生じさせることができる」とは、「肉体・身の記憶の中から物の意味を探し出そうとする」(小川国夫による、古井由吉についてのコメント)とおなしことをいっているのではないか。

また、「こうした志向弓によって繰広げられているのが、「意味空間」とでも呼ぶべき世界であり」、「われわれが生活しているのは、自然的物理空間においてと同様、そうした(人間的・じんかんてき)意味空間においてである」なら、「内向の世代」の「内向」もそうした「(人間的・じんかんてき)意味空間」にほかならず、「社会に目を向けない」ということではないのではないか。
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