夜の蝉

夕方、人と待ち合わせをしたところ、その人の仕事の都合で一時間ほど待つことになり、私はきのう書き始めた創作のノートを取り出し、それほど書き進められるという期待も抱かず、デパートの休憩所の椅子に腰掛けていた。
「二十年も忘れていた感覚を取り戻したようだった」という着想が口火となった。これは頭で考えていただけではどうしても捕まえられなかったものだろう。「書く(表現する)」ということは、「書いて(表現して)いきながら、同時に思いついていくこと」なのだと思った。

深夜1時。
きのうはこの時間でも向かいのマンションの2つの窓に明かりが灯っていたのに、今夜は真っ暗。零時のニュースで「渋谷はまだ29度8分あります」といっていた。その暑さのせいか、蝉の鳴き声のようなものが途切れなく聞こえているが、耳を澄まして団扇を使っていると、それが秋の虫の音ともまぎらわしくなってきて、過ぎゆく夏を惜しむ心をはや先取りしているかのようだ。
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